数ヶ月ぶりの東京。
満員電車。平然と乗れている自分に驚く。
何食わぬ顔で吊革をつかみ、もう片方の手で新書を開いている。周りにはびっちり人肉。またここで生きていくとしても、生きていけることに恐怖する。
怖い。もちろん今でも嫌だ。
でも、あれだけ嫌だった人混みに嫌悪を示さず、難なく順応している自分が怖い。
もう嫌だと、パニックを起こしてくれた方が優しいくらいだ。
とくに朝の新宿駅は怖い。
感情のない仮面をつけた人間たちが我先と行き交っている。彼らが前から次々と迫ってくると、心臓がバクバクしてしまう。無機質なそれにぶつかりそうになる。
そんな自分も仮面を被って歩いているのに気づいて、マスクの中で無理矢理笑顔をつくってみる。
けれど、上手くできずに、自分も仮面の集団を構成する一員なのだと酷く落胆する。
だから、僕はミッキーマウスやドナルドダックの人形をカバンにつけ、今からディズニーランドへ行ってきますみたいな人たちの後を追いかける。
灰色の世界に色をもたらすカラフルなリュックを背負い、歩くたびに光る遊び心あふれる靴を履いた子どものいる家族の後を追いかける。
そして、彼らの後ろを着いていっては、胸を撫でおろす。
幸せを携えた彼らは、この殺伐とした空間において束の間の安息を与えてくれるから。
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