今日も地球はまわる|135日目〜141日目

 

容赦なく地球はまわる。

疲れているからもう少しだけ休ませてと頼んでも、地球が自転のスピードを緩めることはない。

そこには、ぼくたちの感情がはいる余地はないのだ。

テリブルな1週間

「Terrible」

 

今週のルワマガナ郡庁では、この言葉が飛び交っていた。その言葉には、辟易と満足が同居したような響きを持っていた。

 

なにが、そんなに恐ろしいのかと言うと、「イミヒゴ」という年間活動目標である。

 

ルワンダの政府関係のたちは、この目標の達成度合いで評価を下される。彼らは、このイミヒゴのために必死になって働いている。
なぜなら、この評価いかんで予算や人事が決まるからだ。そして、6月が年度末なのである。

 

「Terrible! Terrible! so Terrible! 」

 

土曜も日曜もオフィスに来るんだぜ、とビジネス振興課のボスであるガイは嘆く。
重力3倍くらいかかってない? と思わず尋ねたくなる疲れ顔だったが、すこし楽しそうにも見えた。

 

ドキドキしながら通信簿を待つ、夏休み前の蒸し暑い小学校の教室を思い出す。

たしかにテリブルだった。二重丸の数いかんで、遊ぶ時間を制限されたり、お小遣いは減らされたりした。
評価によって、生活を左右されるかもしれない心持ちと、ちょっと似ているかもしれない。

 

しかし、すぐにそんな可愛いものではないと、思い知らせれる。

起業支援担当の女性は、目の下おおきなクマを作っている。黒い肌でも、異様に目立つ黒色。あまりに見事なクマで、その漆黒に吸い込まれそうになる。

 

クマと言えば、行きつけの肉屋の隣に、新しくレストランができていた。そこのオーナーも、ものすごいクマを作っていた。

 

会社員時代に、道の駅の開業に立ち会ってきたから分かるが、新しく店をオープンさせるのはほんとうに大変なのだ。

お客様は来てくれるだろうか、資金は回収できるだろうか、スタッフはしっかり働いてくれるだろうか、店の行く末を考えると心配は尽きない。不安で毎晩、押しつぶされそうになる。

 

ぼくはそんなとき、YouTubeで松岡修造さんのメッセージを聞いて、不安を押しのけていた。
「竹になろうよ!」「君は太陽だ!」と、彼を励ましたかった。

だが、ジャパニーズが変なことをいい始めたと余計に心労をかけそうだと思い、そっと胸の奥にしまっておいた。

 

ともかく、今後は彼のレストランも支援していくことになりそうだ。

Life is continue

大工と溶接工のコーペラティブへの提案書を印刷するため、親友ベネザの印刷屋を訪れた。

 

いつも「ブラザー」と陽気に迎えてくれるベネザの声に元気がない。

何かあったのか聞いてみると、「給料が少なすぎて、このままじゃあずっと貧乏だ」と言う。

 

彼は優秀なクリエイターで、結婚式で流すムービーを作ったり、パンフレットのデザインをしている。この日も、国から依頼された教育関係のPRビデオを作っていた。

行政からもスキルが見込まれる彼には、多く仕事が集まるのだろう。

 

しかし、彼は会社員。つまり、固定給で、売上はすべて会社に入る。

客観的にみても、独立して食っていける。なんなら、ルワンダでもトップクラスに稼ぐ力があると思う。

 

ベネザだって、ほんとうは独立したい。だが、パソコンやカメラといった商売道具がない。

今の給料では、5年間、毎月律儀に貯金しても買えない。このにっちもさっちもいかない状況に、彼は悲観していたのだ。

 

「それでも、人生は続く」

 

ひと通り語り終えたあと、ベネザは物憂げに言った。

それでも人生は続く。それでも人生は続く。それでも人生は続く。頭の中でこだまする。

 

どんなに辛い出来事があっても、まったく上手くいかなくても、人生は続いていく。

 

プレゼンで失敗しようと、仕事がどんなに溜まっていようと、好きな子にフラらようと、
顔色なんて伺わず太陽はぼくたちを迎えにくる。

「落ち込んでるところ申し訳ございませんが、そろそろ朝にしてもいいですか」なんて、未だかつて太陽に尋ねられたことはない。

 

どんなに足掻いてもイミヒゴの評価はくだされるし、どんなに寝れない夜が続いても店は開けないといけない。

ぼくたちの気持ちなんて置き去りにして、容赦なく地球はまわる。

 

世界のどこにいても、いつだって人間は同じことで悩んでいる。

上司が手柄を奪う、部下が言うことを聞かない、給料が少ない、仕事が多すぎる、恋人と上手くいっていない、体型が気になる。

仕事、お金、恋愛、健康、人間関係。日本人だって、ルワンダ人だって変わらない。

 

時間が経てば、環境が変われば、悩みは解決するような気がする。

しかし、それは幻想だ。外見だけ変えてやってくるが、中身は同じだ。

数年後かもしれんないし、数ヶ月後かもしれない。日本にいようと、アフリカにいようと、南極にいようと、素知らぬ顔でやってくる。

 

その唯一の解決策は、自分が変わる。

すなわち、成長するしかない。そのつど、自分をバージョンアップするしかないのだと、つくづく思う。

 

今日も地球はまわる。

日本にいようが、ルワンダにいようが、容赦なく地球はまわる。

 

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