はじめて自己啓発本を手にした時の衝撃は尋常じゃなかった。
今まで生きてきた世界が音を立てて崩れ落ちたのが分かった。
本って、こんなに凄いんだ。
そこには家や学校では教わったことのない世界が広がっていた。
人生を生きていく上で知っておくべきは、三平方の定理よりも、与える人間が成功するという真理である。
本イコール小説だと思っていた。
まさか人生について教えてくれるとは、思ってもみなかった。
世間の目によって築かれた世界しか知らなかった。
そんなぼくにとって本は、世界はもっと広く自由であることを教えてくれた。
世界には必ず答えがあり、100点を取ることだけが正しいと思っていた。
それがぜったい的な正義だと思っていた。
しかし、違った。
世界には答えなんかなく、0点を取ることが正しい場合があることを知った。
世界に絶対的な価値観なんてない。
一つの価値観しか知らないで幸せになれるはずがない。
でも、学生のぼくはたった一つの価値観しか知らなかった。
そして、自己啓発本を貪り読んだ。
それはもう狂ったように貪り読んだ。
どんどん自分の見ていた世界が変わっていく。
古い価値観が剥がれ落ちていく。その過程は、本当に気持ちがいい。
とはいえ、その状態はいつまでも続かない。
ある一定の量を超えると、効能が薄くなる。これが自己啓発本の限界領域である。
自己啓発本は、読めば元気がもらえる。
自己啓発本というだけあって、たとえ限界領域を超えていても、読むだけでやる気になる。
だから、新しい発見がなくとも手にとってしまう。
さらに恐ろしいのが、成長している錯覚を生み出すことだ。
現実は変わっていなくても、本質的に成長していなくても、自己啓発本を読んでいるだけで成長した気になる。
だがしかし、成長錯覚に陥り続けていても、何の意味もない。
現実はなんら変わっていないし、自分は成長すらしていない。
そんな限界領域に入ったときに出来ることは、ひとつである。
行動。
とにかく行動するしかない。
大前提として、本は読んだら行動に移して、初めて意味がある。
初めのうちは、本と行動の割合が、9:1でもかなりの効果がある。
ところが、限界領域に入ると、0:10で行動しないと効果がないと言っても大袈裟ではないだろう。
自己啓発本で得た知識、成功法則、世の中の真理を、実世界で実践して己の真の知見に変えていかなければならない。
どこまでいってもぼくらが生きるのはリアルな世界である。
そもそも成功や幸せなんて、まさに挑戦と失敗の積み重ねの先にしかないのだから。どう転んでも行動するしかないのだ。
自己啓発本は人生を変えるが、それはきっかけに過ぎない。
読了後、自分自身をどう変容させ、挫けずに行動し続けられるかが大切なのである。
足を動かし、世界に身体を投げ出すしかないのだ。
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