唐突に改名を迫られた。
占い師さんに改名した方がいいと提言された芸人さんは、こんな気持ちなのだろうか。
ぼくは自己紹介だけで、ルワンダを沸かせることができる。
大石をルワンダ語にすると、大きな石の意味で「キブイエ」になる。
だが、ルワンダ人にとって「キブイエ」という名前は可笑しいらしいのだ。ルワンダの西部にキブイエという県があるかららしい。
その日もぼくは「キブイエです」とドヤ顔で言い放つ。いつもの如く笑いが起きる。
さらに、「日本の名前の大石で大きい石の意味だから、キブイエなんだ」と解説を添えて、もうひと笑い。
ここまではいつも通りだった。
しかし、今回のルワンダ人は只者ではなかった。
「キブイエじゃなくて、カブイエに変えろ」と真剣な眼差しを向けてくるのだ。
「キブイエはルワンダの県名だし、使っている人がいないから変だ。でも、カブイエなら、ルワンダ人にもいるし変じゃない」
だから、改名しろというのだ。
いやだ。ぜったいにいやだ。
履き慣らしたキブイエを捨てるわけにはいかない。
なんともチャーミングで、名前を言うだけで爆笑を取れる最強の武器をみすみす手放すわけにはいかない。
ちなみに、「カブイエ」はルワンダ語で小さい石の意味らしい。
なおさらいやだ。
そもそも意味が変わっているし、どうせなら大きい方がいい。
今までキブイエって言っていたのに、急にカブイエに改名しようもんなら、友達のルワンダ人たちに心配されそうだ。
元気だせよ、何があったんだ?
センチメンタルになるな。縮こまらなくても、大丈夫だから。
お前はキブイエでいい。大きいままでいろと。
何はともあれ、ぜったいに改名しない。
ぼくはキブイエ。
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