空の色 #9

 

おじいの十回忌。

弔うのはこれが最後らしい。初めて身近で大切な人を亡くしたのが、母方のおじいちゃんだった。大切な人を失うのが、こんなにも辛いとはじめて知った。死をはじめて知った。

 

十九歳の時だった。大学二年生の春だった。今でも鮮明に覚えている。大好きだった人が、動かなくなるのを見るのははじめてだった。

 

泣いた。わんわん泣いた。

急に涙が止まらなくなった。小学校を卒業して以来、あまり泣くことはなかったけど、こんなに涙って出るんだって。こんなにも泣くんだって思った。自然と。涙腺崩壊とは、このことを言うのだろう。

 

ただ、あの日の空はスッキリ晴れていた。なんだかまたどこかで会える気がした。そんな爽やかな後味のいい日だった。あの日の空の色は今でも鮮明に思い出せる。

 

そんな思い出から新年度は始まった。

思い返すと一年前、新しい会社で働き始めて、ひと月が経ったときの空。

ぼくはその色をその空気を、まったく覚えていない。それほどに、余裕がなかった。感性を殺さないと、生きれないほどに追い詰められていた。

 

それは、約一年続いた。

 

けど、今年に入ってから、とくに四月から変わった。空の表情を読めるほどに。仕事面でようやく慣れてきた。

そして、あの一年は必要だったし、感謝している。もう一度繰り返すのは、ぜったいに嫌だけど。

 

とはいえ、最近もっとも大きいのは、好きな人がいるからだろう。

世界が輝いて見える。と同時に苦しくもある。恋ってこんなにも苦しかったかと。でも、それはイヤな苦しさではない。ドキドキモヤモヤする。そんな今を楽しみ、関係を進めるべく行動に移していく。

 

昨年では、考えられなかった。

そんな余裕がなかったこともある。そんな対象がいなかったこともある。どちらも満たされていたとて、動かなかったと思う。

それが今はどうだ。どうしたら、ゴールへ到達できるかを具体的に考え、取るべきアクションをスケジュールにまで落とし込んでいる。

 

あとは、バランス感覚を大切に、プランを実行するのみである。

相手のステータスすら分かっていない以上、来月で失恋する可能性は大いにある。それはそれで仕方ない。ひどくショックは受けるだろう。

でも、それで良いのだ。今こんなにも温かい気持ちになれているから。その時間をくれたことに感謝し、痛みが引くのを待つしかないのだ。

 

誰かは言った。恋をして恋を失った方が、恋をしないよりましである、と。

ああ、ウェルテルよ。ああ、ジャンヌよ。貴方がただの気持ちがとても分かる。

 

最近は、どんな空も美しい。

早く会社へ行きたい。働きたい。エネルギーが溢れてくる。ああ、楽しい。ありがとう。未来に恋してる。

 

シェアしていただけると嬉しいです!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です